私はチクワに殺されます 読書感想文

私はチクワに殺されます 読書感想文

2024-08-14
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チクワの穴を通して覗いた相手の死に様が見えるようになった、初老トラック運転手の話。

「こんな危険なチクワがあったら世界が滅ぶ!独裁者が生まれる!」と、チクワから世界を守るために立ち上がったおじさん。チクワを買い占めようとしたり、覗けないようにチクワの穴を塞いだり、店に並ぶチクワにきゅうりを詰めたりする武勇伝が続く。

ただ、このおじさんの武勇伝(?)は”本人が書いたとされる”手記の話。

チクワに人を殺す能力があるのか。チクワ殺人はなぜ起きたのか。そもそも本当に起きたことなのか。手記をどこまで信じていいのかが全くわからない。

 

だんだん気が狂っていくチクワおじさんが怖すぎる。気軽に書いちゃいけないと思うけれど、何かしらの精神疾患を抱えるようになった人は、こうやって狂っていくのかなって想像してしまった。

チクワおじさんは精神疾患ではなかったけれど、精神疾患よりも、自分にも家族にも関係が出てきそうなことが原因でチクワおじさんになってしまった”とされている”から、チクワと同じくらい身近な恐ろしい出来事だと感じる。

 

身近にあってよく食べるチクワがこんな恐怖材料になるなんて思ってもいなかった。チクワが怖いというか、人間が怖いというか。チクワに関わる人間が怖いというか…。

途中、チクワを覗いて殺すのではなく、口に詰め込んで物理的に殺そうとしたのは笑った。それが本来のチクワ殺人だよ…。


完全にネタバレ↓

綺麗に終わらない話ではあった。

犯人はいた。動機もわかった。だけど、最後にまた謎が残った。スッキリしないといえばスッキリしない。

 

チクワを覗くことによって起きた殺人の手記は、「チクワおじさんが認知症になったが故の殺人とチクワを結びつけた」と、娘が創作した手記だった。

自分(チクワ娘)が両親と叔母を殺したことを隠すための手記。木を隠すなら森の中。事件を隠すなら事件の中。全ての事件の犯人をチクワおじさんにするための手記だった。だけど、それを暴いたフリーライターが次のチクワおじさんになってしまった。

チクワを使って人を操ることも殺すこともできると最後の最後にわかって、本当にあの手記はチクワ娘が創作したものだったのか…?と改めて考えてしまう。

チクワで操れば、PCを使って大量の文章を書ける。たぶん初老でPCを日頃から使っていないチクワおじさんでも書けると思う。チクワ娘が全て操って殺しをさせて、だけど自分が表に出るわけにはいかないからチクワおじさんに全ての罪を被せたのかもしれない。

だとしたら、あの手記は主語がチクワおじさんになっているだけの、チクワ娘による犯行の自白だったのかも…とか、考えてしまう。

 

それに、この話のチクワおじさんが初めてのチクワおじさんとはどこにも書かれていなかったと思う。もしかしたら、何人目かのチクワおじさんなのかもしれない。

そして次にチクワおじさんになるのは……。チクワで覗かれているのは、私たちかもしれない……。

チー、クー、ワー!

【追記】

作者の五条紀夫さんにこのレビューブログが届いて、しかも読んでもらい、面白がってもいただき…。ありがとうございますと申し訳ないとありがとうございますの気持ち。ありがとうございます!!

<blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr">レビューブログ見っけ♪<br>がっつりネタバレが書いてあるので閲覧注意。「チクワおじさん」というパワーワードが好き。で、やっぱり「チー、クー、ワー!」って叫んでるw<br><br>私はチクワに殺されます 読書感想文 | おふとんだいすきくらぶ <a href="https://t.co/5kEu6O4Ibn">https://t.co/5kEu6O4Ibn</a> <a href="https://twitter.com/m_k__518?ref_src=twsrc%5Etfw">@m_k__518</a>より</p>&mdash; gojo@軟式 ⓥ (@gojo_n0) <a href="https://twitter.com/gojo_n0/status/1823888521461219330?ref_src=twsrc%5Etfw">August 15, 2024</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script>